シャーロッキアン


少し早めに到着したので、テーブルにノートパソコンを広げて、インターネットに接続したり文章を入力していた。
待ち合わせの時間にだいぶ遅れて、彼女が急ぎ足で来るのが見えた。


「おまたせー。」


「そんなでもないよ。それに、電車が遅れたんじゃあしょうがない。」


「えー。どうして知ってるの。」


「まあ、初歩の推理と言いたいところだけど、これのおかげさ。」


「わー、新しいパソコン買ったんだ。小さいねー。ちょっと貸して。」


彼女はそう言うと、パソコンの向きをくるりとかえた。


「インターネットにもつなげるんだ。便利だねー。」


「そうだ、メモ帳は閉じないでくれよ、まだ書いてる途中でセーブしてないんだ。」


「なに、またなんか書いてるんだ。どうせパソコンのこととかでしょう。どれどれ。」


どうやら、途中までだって言ったにもかかわらず読み始めたようだ。
そして、何やらぶつぶつ言いながら読んでいたが、顔をあげると怒ったように言った。


「これ、ちょっとひどいよー。」


「そうかな。」


「お店で買ってきたものを組み合わせただけだとか、誰でもできるとか。」


どうやら、本当に怒っているらしい。だが、何にだ?


「そんなものを自作といて欲しくないとか、女の子をばかにしてるよ。」


女の子って、どういうことだ? そうか、わかったぞ。


「もしもし、お嬢さん。その話をいったい何の事が書いてあると思ったのかな?」


「えっ。チョコレートのこと、でしょう。」


「はずれ。」


「うそっ。じゃあ何のことなの。」


「さっき、読む前に言ってた、パソコンのことってのが正解。正確には自作パソコン。」


「えー。そうなの。」


「そうなのっ。ちゃんと読めばわかるはずだよ、まったく。」


「はいはい。」


彼女はちょっとふくれた感じで横を向くと、ちょうど通りかかったウェイトレスになにか注文した。


「まあ、いいさ。」


「なんのこと?」


「いや、今のでなんかもらえそうなことがわかったからね。」


「どうかしらね。」


「期待してるよ。」


「手作りのパソコンとか、かしら。」


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