エデンの商人
「こら、アダム。動いちゃいかん。肋骨がとれんじゃろう。」
「やめてください。そんなことされたら死んでしまいます。」
「せっかくお前の他にも人間をつくってやろうというのに。」
「わたしの時みたいに塵から作ればいいじゃないですか。」
「やってみたが、うまくいかなかったんじゃよ。あれは材料に問題があったんじゃな多分。」
「だからって、人の肋骨を取るなんてあんまりだ。」
「抵抗しても無駄じゃ。ほれ、ここにお前の書いた証文だってある。」
「そんなぁ。あの時は生まれたばかりで何もわからなかったんです。」
「約束はまもらんといかんな。」
「お待ちなさい。」
「おまえはリリス。邪魔をするな。今度はおまえの時のように失敗はせんぞ。」
「その証文には確かにアダムが神に肋骨を一本渡すと書いてありますが、血を流してよいとは書いてありません。」
「なにっ。」
「神が約束を守らなくてもよいのですか。」
「うーむ、よかろう。今回はわしの負けじゃ。」
「ありがとうございました。何かお礼をしなくては。」
「それじゃあ、魂でもいただこうかしら。痛くもないし、血もでないから安心して。」
ｒｅｔｕｒｎ ｔｏ Ｘ